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今はもうない |
歴史をさかのぼると、インダストリアルデザイナーは、デザインされた「ガワ」(ケース、ボディなど)を機械に与えることで、生活に溶け込む工業製品を作り出した。ただし、以前は新しい「モノ」を作るコストは工作機械や金型の価格が反映されていて非常に高くついた。このことはデザイナーにとっては大きな壁となっていた。伊オリベッティ社の製品デザインで知られるEttore Sottsass氏らが作ったデザイナの集団「メンフィス」のように、既存のプロダクトデザインへの反旗を翻す運動もあったが、しかし彼らの作品は高価だった。
ところが、コンピュータの低価格化で、コンピュータ制御の工作機械が低コストになり、小規模のモノ作り、「パーソナルファブリケーション」が可能となった。「これは革命だ」と奥出氏は言う。こうした流れから雑誌『Make』やイベント『Maker Faire』が登場してくる。一方、初心者でも手軽に扱えるプログラミング環境Processingが登場し、メディアアートなどの分野で使われるようになる。これも「大きな事件だった」と奥出氏は言う。
奥出氏は続けて、「デザイン思考」の成り立ちを語る。かつてのデザイナが直面していた課題は、パーソナルファブリケーションの登場で技術的には抜け出ている。「抜けられないのは人間の思考だ」と奥出氏は指摘する。そこで、フィールドワークに基づくエスノグラフィ(民族誌学的調査)を重視する。定量化できない人々の行動を、綿密な現地調査で明らかにしていく。その結果をプロトタイプに結びつけ、モノを作る。
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